大・古墳文明  その6



天皇陵ということは、今上(きんじょう)天皇のご先祖様のお墓です。現在にまで続いている家系の方々の先祖の墓を調査する、つまり墓を暴くのは問題だ、という、人として当たり前の考えが宮内庁の姿勢です。

そのため、宮内庁は天皇陵の調査に難色を示すのですが、それを良い事に「宮内庁が天皇陵の調査を許さないのは隠したいことがあるからだぁ」と叫んでいる連中がいます。

例えば、「日本書紀」に、仁徳天皇が自分の陵墓の場所を決めた逸話が書かれていて、同じ場所に仁徳天皇陵があるのですが、それでも納得できないのでしょうか?

といっても、彼らは「古事記」や「日本書紀」を全否定ですから。自分の妄想に使えそうなところをつまみ食いするんですが。

難癖をつけている中で一番悪質なのが、歴史小説家の井沢元彦です。自著の「逆説の日本史」の「古代黎明編: 封印された「倭」の謎」に「宮内庁が天皇陵の学術的調査を認めない本当の理由は何か?もちろん、それは公式見解ではないから、新聞・雑誌には一度も載ったことはない。だが事情通の間では、これが真の理由だと噂されるもがある。本来、風聞に過ぎないものは、あえて取り上げるべきではないのかもしれない。しかし、この事は日本の古代史を考える上で、非常に有益な材料であるので、敢えて噂のまま記してみよう。
それは天皇陵を発掘すると、天皇家と朝鮮半島の関係が明らかになるから反対しているのだ、という見方である。もっと具体的に言えば、天皇家の祖先が朝鮮半島から渡来した事の証拠が出て来る恐れがあるからだ、という事だ。私自身は天皇家の祖先が朝鮮半島から渡来したのかどうか、まだ確固たる見解はない。しかし、可能性があるかと問われたら、「十分にある。」と答えるだろう。」

凄い文章ですね。「公式見解ではない」「噂」などと言っておきながら、あたかも事実のように断定しています。しかも、一応、「確固たる見解はない」と言っているので、自分に責任は一切ないという事を強調しています。

公式見解ならともかく、噂や風聞であれば、書く必要がないものですが。週刊誌ならともかく、ちゃんとした書籍に噂や風聞で文章を書くって許されるのでしょうか?その事の根拠を解説するのならわかりますが。

ところが、井沢元彦の場合、噂や風聞を堂々と書いていて、しかも自らの責任を回避するトリックを多用しつつ。井沢元彦には、公に何かを論ずる資格がありません。井沢元彦は皇室の先祖が朝鮮半島から来たものと考えているようです。「皇統」ではなく、「天皇家」という共産党用語を使っている時点で、偏った思想の持主ではないかな、と思いますが。江上波夫(えがみなみお)の騎馬民族征服王朝説が元ネタなのでしょう。

宮内庁が天皇陵の調査を認めないのは、それなりの理由があるのですが、それを良い事に「宮内庁が調査を拒否するのは隠したいことがあるからだ」とやって来る。つまりは、宮内庁に対して、「隠したいことがない事を証明しろ!」と言っているのと同じ事です。ない事の証明は誰にも出来ないにも関わらず、です。

いわゆる「悪魔の証明」ですね。このレトリックを使う者には、何か邪(よこしま)な目的を持っていると考えて間違いありません。要するにプロパガンダです。

仁徳天皇陵を始め、日本国が世界に誇る大規模な遺跡が邪(よこしま)な目的に活用されてしまうとは、何とも嫌な話です。古墳に限った話ではないですが。

このチャンネルの趣旨は、「古事記」や「日本書紀」を基(もと)に、古代の先人が残してくれた文明の遺産を、真っ当な形で将来に引き継いでいく一助となる事、なので、皆さんも賛同いただけたら、チャンネル登録していただけたら、と思います。

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