多謝!台湾

東日本大震災で台湾からの義援金は各国の中で群を抜く250億円に上りました。この度の熊本地震においても、早々に熊本県に計6500万円を寄付すると発表、5月に新政権を発足させる民主進歩党も100万台湾元(約340万円)の寄付を表明するなど、台湾国内で熊本への救援・復興支援の動きが広がっています。

台湾の人口(約2300万人)やGDP(国内総生産)などを考えると、彼らのこうした支援は破格のものであることがわかります。
なぜ台湾人は日本に想いを寄せてくれるのか──。

司馬遼太郎の『台湾紀行』に、かつて日本人だった蔡昭昭さんという美しい台湾婦人から、
「日本はなぜ台湾をお捨てになったのですか」と尋ねられ、
「美人だけに、怨ずるように、ただならぬ気配がした。私は意味もなくどぎまぎした」と司馬さんが困惑する場面が出てきます。

日本が台湾を捨てた──それが昭和20年8月のポツダム宣言受諾による台湾の放棄なのか、昭和47年の田中角栄内閣による「日中国交回復」と「日台断交」なのか、あるいはその両方なのか。

「家族ぐるみのお招ばれの席上で、にわかに現代史の話を持ちだすのは無粋」と思った司馬さんは黙ってしまうのですが、昭昭さんは再度、
「日本はなぜ台湾をお捨てになったのですか」と尋ねます。

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「たずねている気分が、倫理観であることは想像できた。考えてみると、彼女の半生をひとことでいえば、水中の玉のように瑩として光る操なのである。こういう人の前では、答えに窮したほうがいいとおもった」

答えに窮した司馬さんと同じような思いを、私も台湾を旅し、台湾人を取材して何度か味わった覚えがあります。

先年、『台湾紀行』に“老台北”として出てくる蔡焜燦さんの『台湾人と日本精神』(日本教文社)の出版と、金美齢さんの夫君である周英明博士の40年ぶりの台湾帰国を祝う宴席に出席したときのこと。李登輝さんに続く二人目の台湾人総統陳水扁さんの時代です。

蔡さんはビールのグラスを目の上まで上げると、「お国のために」と言ってグラスをほし、周さんも、金さんも、私も、「お国のために」と応じました。
金さんが、いつごろからか、「お国のために」というのが、蔡さんと私の合言葉になってしまったと、同書の序文に記したのを思い出しつつ、日本ではとんと聞かれなくなってしまった「お国のため」という言葉が、妙なリアリティーをともなって私の胸に響いてきたことを思い出します。

蔡さんは同書のあとがきで、
〈「祖国・台湾よ永遠なれ!」
「かつての祖国・日本よ永遠なれ!」
 私は、“二つの祖国” の弥栄を祈り続ける。〉
と綴っています。こうした歴史に生き、こうした思いを率直に披瀝してくれる人々がいる国は、世界中に台湾しかないでしょう。

同じく日本統治を受けた歴史を持つ“あの国”とは大変な違いです。
『海角7号』や『KANO』のような物語は、“あの国”の人々との間にも無数にあったはずですが、彼らはそれを否定し、無視し、なかったことにするのに必死です。

私たちが大切に付き合うべき相手は誰か。いよいよこのことを真剣に考えねばなりますまい。

上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

引用:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/4/22
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